【EventReport】映画「ビリギャル」主人公が語る、子供の能力を引き出すオトナのあり方
2019年12月02日(月)【タイトル】映画「ビリギャル」主人公が語る、子供の能力を引き出すオトナのあり方
【日 時】2019/11/4(Mon) 14:00–16:00
【場 所】体育館
Reported byオオタコウヘイ
イベントレポートは参加者の方にリレー形式で担当していただいています。ライターの個性を尊重し、文章のテイストはあえて統一していません。
11月4日(月祝)朝、僕は名古屋から徒歩10分の廃校をリノベーションしたオープンイノベーション拠点『なごのキャンパス』へと急いでいました。なぜなら今日は、小説や映画で有名になった『ビリギャル』こと、小林さやかさんの講演がなごのキャンパスにて開催されるのです!
恥ずかしながら『ビリギャル』について書籍も映画も未経験だった僕は、今回のイベントへ参加することが決まってから予習のためにと映画を観て感動したばかりだったので、ビリギャルご本人からの話をお聞きできる今回の機会に内心かなりワクワクしながら会場入りしたのでした……。
※なごのキャンパスとは
100年の歴史ある小学校『旧 那古野小学校』の校舎を使って東和不動産、パソナJOB HUB、P-Pro、Tongali、名古屋商工会議所の運営事業者にて10/28に公式オープンした施設。
『ひらく、まぜる、うまれる』というキャッチコピーがあらわすように、大手企業や地元のベンチャー企業、もちろん個人の方も利用でき、互いの交流を促進する場作りが特徴となっている。
またオープニングイベント盛りだくさんで11月は毎日何かしらのイベントが予定されている。<イベント一覧はこちら>
30分後のセミナー開始に向けて、講演会場となる体育館に参加者が続々と到着。 300名を超える事前申し込みとのことで、注目度の高さがうかがえます。
今回の講演テーマが『映画「ビリギャル」主人公が語る、子供の能力を引き出すオトナのあり方』となっていることもあってか、親子連れの参加者の姿も目立っていました。
今回はお子様連れの参加者が多くなることを見込んでか、キャンパス横のコミュニティセンターに『お子様ルーム』の準備が、なごのキャンパスの心遣いが垣間見えてほっこり^^
いよいよ開演です。
冒頭、なごのキャンパスのコワーキングスペースやオフィス環境、その他レンタルスペースなどの施設概要のご案内があり、そしてお待ちかね小林さやかさんの登壇です。
実は今回のお話の中で一番時間を使っていたのがこの自己紹介の部分でした。
小林さんが来場の皆さんに伝えたいメッセージを理解してもらうためにとても重要な部分として、まず小林さんの家庭環境、家族構成、兄弟のこと、そして恩師である坪田先生の著書『ビリギャル』が出ることになったきっかけなどについて。
今回話を聞いて初めて知ったのですが、実はこの本が出たとき小林さんは既に25歳。就職後で社会生活が2年ほど経った頃だったそうです。
なぜそんなに時間が経った後に本が出たのか、それは小林さんのお母さん(ああちゃん)から、坪田先生へ送った一通の手紙がきっかけだったとのこと。
小林さんは映画でも語られたように3人兄弟。
父親が『プロ野球選手にする』と誓ったために野球だけをして育った弟さんと、朝起きられないことが理由で早くから不登校になっていた妹さんがいます。
このお二人についても壮絶なエピソードがあるそうなのですが、そのお話はああちゃんが書いた本『ダメ親と呼ばれても学年ビリの3人の子を信じてどん底家族を再生させた母の話』を読んで頂くとして……。
二人の弟妹が自立し、子育てもようやくひと段落ついた、とああちゃんが思った時に、坪田先生に宛てたのがこの手紙だったそうです。
そしてその手紙を受け取った坪田先生は、この大変だった家族になにか贈り物がしたいと思って筆をとり、その物語がWebでバズり、出版社の目にとまり書籍化したと。
これが小林さんの大学合格から7年ののちに本が出た理由だそうです。
小林さんの自己紹介に話は戻ります。
小学生時代とても内気でおとなしい性格だった小林さんは、『このまま内気な自分のままで人生を終えるのは嫌だ!』と自ら決心して中学高校一貫の私立中学を受験。
小説や映画では大学入試の猛勉強が描かれていますが、この中学入試の時も短期集中で猛勉強し目標とした中学校に入学を果たしたのだそうです。
子供のころから、目的を重視する性格だったという小林さんは、大学までエスカレーター式に進学できる学校に入学し、晴れて勉強する目的も必要もなくなり、好きなことをして生きるべく見事キャラ変に成功(笑)
今までの自分を知っている人がいない環境で、新しい自分として好きな友達と楽しい学生生活を謳歌、立派なギャルへと成長します。
そんな自由奔放な学校生活ゆえ、ああちゃんが学校に呼び出されることは何度かあったそうなのですが、そのたびに母は『娘の行った事は悪かったかもしれないが、娘にはとても良いところがある』という事を心から、自然に、必ず伝えてくれたのだそうです。
そんな気持ちが伝わって、小林さんもこんなに自分を信じてくれる人を悲しませまいと、更生したと語っていました。
そして次に坪田先生との出会いの話。
本当は、弟さんのために予約していた入塾面談の日、弟さんが何としても行きたくないと拒否した事がきっかけで、代わりに面談に行ったのが姉の小林さんでした。
適当に話を聞いて帰ろうと思っていた小林さんですが、自分の話に興味をもって面白がって聞いてくれてる今まで自分が接してきたああちゃん以外のオトナたち(=学校の先生や父親)とは明らかに違う大人と初めて出会い、どんどん話に引き込まれていったそうです。
そして帰宅、東大よりイケメンがたくさん居そうという理由で目標大学を慶應に設定をした小林さんは、家族に『ケイオーに行く!』と宣言。
一流大学入学を目標にしたことではなく、ワクワクできる目標を娘が持ってくれた事に、ああちゃんはとても喜んでくれたそうです。
一方、今では仲良しという当時の父親は、『どぶに捨てるのと一緒だからお金は一銭も出さない。』と吐き捨て、その返答に対する憎しみの気持ちはかえって絶対に合格して見せるというエネルギーに変わったと話されていました。
また、坪田先生は戦略的な方で、小林さんが慶應義塾大学を目指すうえで、必要なインプットとその時期について詳細な計画を立てて共有してくれたそうです。
高校2年生だった小林さんに対して、最初は小学4年生のドリルから開始し、基礎知識から徹底的に身に着けながら、受験のタイミングまでにどのように学力をつけていくかという具体的計画があったことで、最後まで走り続けることができたと話していました。
そして、物語にあったような猛勉強ののち小林さんは見事、慶応義塾大学に合格します!
ここまでの話の中に、不可能を可能に変える5つのポイントが紹介されていました。
①「ワクワクする」目標を設定しよう
小林さんの場合、東大ではなくて慶応にしたというのは、当時好きだったアイドルも通う学校ならば、イケメンが沢山いるのでは?!という他愛のない動機だったと言っていましたが、内容や理由はどうでもよくて、『ワクワクできること』そのこと自体が重要という事が良くわかりました。
人間、ワクワクすることに力は沸くし、能力も発揮しやすいですよね!すごく共感です。
②根拠のない自信を持とう
小林さんは勉強を始めたころ、「聖徳太子」を「せいとくたこ」と読み、「JAPAN」の和訳を「ジャパーン」と訳したほどだったそうですが、根拠なく自信を持つことができた理由には、絶対的な自己肯定感を持っていたという事があると話していました。
正に、ああちゃんが常に表現し続けてくれた『うちの子は素晴らしい』のメッセージがここに大きく影響しているのだなぁと感じました。
③具体的な計画を立てよう
坪田先生の戦略的な支えで、慶應義塾大学への合格を目標にセットした後は、その目標達成のために必要な計画を立てました。
現状を知り、目標の高さを知り、その差分と、差を埋めるために必要なアクションという風に、具体的に落とし込んでいったのだそうです。
④目標や夢を公言しよう
目標が出来たら自分を追い込み逃げ場をなくす意味で、公言するという話でした。
確かに、宣言することで自分自身にマインドセットすると同時に、他の人もその目標を知るのでいい加減にはできなくなるし、応援してくれる人も出てくるとなおさら裏切れない。
自己成就予言(意識的、または無意識的に自己の予言や主観的期待に沿うような結果を生じさせる行動をとったために、自己の予言や期待通りの結果が出現する現象。)や、ピグマリオン効果(期待を込めれば人は伸びるという効果。)、ゴーレム効果(親や教師、もしくは自分で自分に期待をせずにネガティブな言葉をかけ続けると成果が下がる効果。)などのキーワードも心に刺さりました。
⑤憎しみをプラスの力に変えるべし
くそじじい(笑)と紹介していた父親の言葉、当時は全く理解できなかった学校の先生たちの反応などなど目標を持ち公言した小林さんにはいろいろな悔しい反応が返ってきたそうです。
その度に憎しみの気持ちをエネルギーに変え、見返してやるんだという思いで勉強に励んだそうです。
人間の感情で一番エネルギーを発揮する『憎しみ』の気持ちをうまく利用する、これも坪田先生に教わった事だそうです。
そして、次はそんな頑張れる子供と環境がどうやって実現されたのか。
小林さん自身の性格や頑張りなどももちろんあると思いますが、それらを形成した子育て、親としての接し方、教育者(坪田先生含む)の在り方がどうだったのかを3つのポイントに絞って話していただきました。
ちなみに、この話に差し掛かったあたりから、参加者の中には、目に涙をいっぱい貯めて熱心に話を聴く方の姿もチラホラ。
1.子供を信じきる
『言うは易く行うは難し』という言葉がありますが、まさに。だと思いました。
子供を信じきるという事は、どんなことがあってもこどもの可能性や良いところを認めていて、常に味方である、そしてそのことを子供にもきちんと伝え続けるという事。
まさにああちゃんが子供たちに行い続けてきたことなんだなと思いました。
そしてその結果として、『根拠のない自信』を持つことができる、自己肯定感が養われるのでしょう。
2.Beingで褒める
子供の行動や所属、所有、ステータスなどをほめるのではなく、存在自体を褒めて認めるという事、存在を褒めるつまり、『居てくれることが素敵』、『笑顔であることがうれしい』、といった感じでしょうか。
ついつい自分も、目に見えることを表現や評価してしまいがちですが、存在自体に対する褒めや承認を自分の子供にも、もっとしていこうと心に誓うのでした。
また、併せてこの時お話していたのは『YouメッセージではなくIメッセージ』というお話。
『(Youは)勉強しなさい!』ではなく『(Iは)君に勉強してほしいな、そうすることが君の力になるから』
というメッセージの仕方も勉強になりました。
3.怒らない
そして最後に、感情に任せて怒らないという話。
人間だもの、感情をぶちまけたくなることはあると思います。
しかしながら怒りは二次感情、本来の感情が抑圧されて噴き出すときが怒りの感情であるという仕組みを理解したうえで、別にある本当の感情を正しく表現するというアンガーマネジメントが大事というお話でした。
また怒るとネガティブな言葉などにもつながり、ゴーレム効果などを引き起こす要因にもなりますね。
コーチングの基本である傾聴(よく聞くこと)、質問(相手を引き出す良い質問)、承認(褒めと叱り)をうまく行いながら人の自発性を引き出していく、怒って人に命令するのではなく、良いところを引き出しながら結果的に当人の行動変容を促すというお話を聴き、ああちゃんや坪田先生が行っていたのがこのコーチングなのか!と、すとんと腹落ちしました。
終始、笑いの絶えないお話で90分という講演時間があっという間に過ぎていきました。
そして最後に、今後の社会で必要になる教育について、『最終学歴社会』から『最新学習歴社会』へという話があり、予測できないVUCA時代(※)、偏差値ではなく経験値をもって様々な局面においても常にチャレンジし自ら考えて行動できる力を身に着けるための教育の重要性を感じました。
※VUCA時代・・・Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字。(ブーカ)
今回の講演を聞いて、僕自身も人の親としてとても参考になったのと、参加者の皆さんの満足度も非常に高そうだったのが印象的でした。
なごのキャンパスという歴史ある学び舎のリニューアルで今回のような話がお聞きできたのはとても良かったと思いますし、企業やビジネスパーソンだけではなく地域の個人も自由に出入りができる学びの拠点の可能性を改めて感じ取ることができた貴重な時間でした。
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